OrbitMap@KDD19 – 時系列ビッグデータを高速に要因分析・将来予測するリアルタイムAI技術

技術紹介動画

OrbitMapの概要についての3分間の動画です。

 

研究成果のポイント
  • 時系列ビッグデータをリアルタイムかつ高精度に要因分析・将来予測するAI技術を開発
  • IoTビッグデータから時系列モデル間の動的な因果関係を捉え、事象の連鎖をモデル化することにより、高精度かつ高速に要因分析・将来予測を行う技術の開発に成功。(現時点で世界最高の予測精度。例:製造業データにおいて、最新の深層学習による予測手法と比較し最大で、約67万倍の高速化と約10倍の高精度化。)
  • スマート工場における装置故障など、様々な事故やトラブルの兆候をビッグデータから高速かつ自動的に抽出・予測することが可能に。様々な産業応用に大きく期待。

     

時系列ビッグデータを高速に要因分析・将来予測するリアルタイムAI技術を開発しました。
時系列ビッグデータを高速に要因分析・将来予測するリアルタイムAI技術を開発しました。
概要

大阪大学産業科学研究所・産業科学AIセンターの櫻井保志教授/副センター長と松原靖子准教授らの研究グループは、これまで開発を続けてきた時系列ビッグデータ解析技術を発展させ、既存の深層学習に基づく技術では実現できなかった高い精度の予測や最適化、リアルタイム学習と情報出力、要因分析や結果説明を可能とする世界最高水準の革新的なAI技術を開発しました。

これまで、AI関連の技術については、画像や映像処理、自然言語処理、センサデータ処理の分野を中心に、深層学習を用いたソフトウェアの開発が活発になっており、製造業、自動車、金融、医療・ヘルスケア、小売業など、広範囲に渡って活用されています。しかし深層学習に関しては、現時点では数多くの技術的な問題点が存在し、使用用途が限定されていました。

今回、櫻井教授・松原准教授らのグループは、IoTビッグデータから時系列モデル間の因果関係(要因−結果関係)を捉え、事象の連鎖をモデル化することにより、高精度かつ高速に要因分析・将来予測を行う技術の開発に成功しました。開発技術は深層学習を含む現存する最先端の予測手法の中で現時点において世界最高の予測精度と計算速度を示しており、例えば製造業データに対し、最新の深層学習による予測手法と比較し最大で、約670,000倍の高速化、約10倍の高精度化(予測誤差88%減)を達成しました。

本研究による開発技術を発展・適用することで、様々な産業応用が期待できます。例えば、自動車走行における急なブレーキやハンドル操作、スマート工場における装置故障など、様々な事故やトラブルの兆候をビッグデータから高速かつ自動的に抽出するための要因分析をリアルタイムに行うことができます。

現在、複数企業とスマート工場、車両走行データ解析、生体情報解析などのテーマで実用化、事業化に向けて共同研究を実施しています。

なお、本研究成果は、ビッグデータ・AI分野のトップ会議であるACM SIGKDD2019 (8月6日), ACM CIKM2019 (11月5日)において、発表しました。

 

時系列データストリーム(モーションセンサ)を用いた要因分析とリアルタイム予測の様子。多次元のデータストリームに対し、重要なパターンや動的な因果関係を自動的に抽出し、動的ネットワークモデルを学習・構築し続けます。学習したモデルに基づき、高速かつ高精度に将来パターンを予測し続けることができます。
IoTビッグデータから動的な因果関係をリアルタイムに抽出し、モデル間の連結の強さの推定、要因/結果の関係性を自動発見します。これにより、事故やトラブルのサインの監視することができます。
スマート工場における装置故障予知に基づく生産性・品質の向上、自動車走行における急なブレーキやハンドル操作の予測による運転支援など、様々な産業応用が可能となります。
研究の背景

自動車分野のコネクティッドカー・サービス、製造業におけるデジタルツイン、デバイスや材料開発におけるマテリアルズインフォマティクスなど、産業や社会は大きく変化し、このような状況においてAIやビッグデータ解析は第4次産業革命を支える技術として期待されています。その中でも、AI関連の技術については、画像や映像処理、自然言語処理、センサデータ処理の分野を中心に、深層学習を用いたソフトウェアの開発が活発になっており、製造業、自動車、金融、医療・ヘルスケア、小売業など、広範囲に渡って活用されています。しかし深層学習に関しては、現時点では数多くの技術的な問題点が存在し、使用用途が限定されていました。

櫻井教授・松原准教授らのグループでは、IoTビッグデータから時系列モデル間の因果関係(要因−結果関係)を捉え、事象の連鎖をリアルタイムにモデル化する世界初の技術を開発しました。

開発技術は、IoT/センサデータストリームをはじめとする大規模な時系列データに対し、リアルタイムに重要な特徴や潜在的なトレンド(レジーム)を発見し、各レジーム間の動的な関係性を抽出することで、長期的かつ継続的に時系列データストリーム内の重要な動的要因を監視し、将来のイベント予測を行います。

さらに、本技術の特長として、例えば、自動車走行における急ブレーキや急なハンドル操作、スマート工場における装置故障など、様々な事故やトラブルの兆候(サイン)をビッグデータから高速かつ自動的に抽出するためのリアルタイム要因分析を実現できます。


本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、自動車走行における急なブレーキやハンドル操作、スマート工場における装置故障など、様々な事故やトラブルの兆候をビッグデータから高速かつ自動的に抽出するための要因分析をリアルタイムに行うことができます。

すでに、トヨタ自動車、富士通研究所、三菱重工エンジン&ターボチャージャ、三菱重工工作機械、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、電通デジタルなど様々な企業の方々とスマート工場、車両走行データ解析、生体情報解析、デジタル広告などのテーマで実用化、事業化に向けて共同研究を実施しています。


特記事項

本研究成果は、ビッグデータ・AI分野のトップ会議であるACM SIGKDD2019(8月6日),ACM CIKM2019(11月5日)において、発表しました。
論文名:Dynamic Modeling and Forecasting of Time-evolving Data Streams
著者名:Yasuko Matsubara, Yasushi Sakurai
会議名:ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD), August 2019.

論文名:Automatic Sequential Pattern Mining in Data Streams
著者名:Koki Kawabata, Yasuko Matsubara, Yasushi Sakurai
会議名:ACM International Conference on Information and Knowledge Management (CIKM), November 2019.

また、本研究成果の一部は特許申請中です。
発明等の名称:予測装置、予測方法およびプログラム
発明者:松原靖子、櫻井保志
出願番号:特願2019-142295
出願日:2019年8月1日

なお、本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ「新しい社会システムデザインに向けた情報基盤技術の創出」研究領域(研究総括:黒橋禎夫)における研究課題「複合時系列イベントストリームに基づくリアルタイム将来予測と社会行動支援サービスの構築」(研究代表者:松原靖子)の一環として行われており、また、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「超スマート社会の実現」領域(運営統括:前田 章)における研究課題「複雑事象のモデリングによる知的支援システムの開発」(研究代表者:櫻井保志)において、本研究をベースとした技術発展を行う予定です。

阪大内ページ: 「時系列ビッグデータを高速に要因分析・将来予測するリアルタイムAI技術を開発」